日本の所得税の計算のしくみ

日本の所得税の計算のしくみ

(1) 所得の種類

日本の所得税法は、個人に帰属する所得をその発生形態により種類に区分しています。

① 利子所得 ② 配当所得 ③ 不動産所得 ④ 事業所得
⑤ 給与所得 ⑥ 退職所得 ⑦ 山林所得  ⑧ 譲渡所得
⑨ 一時所得 ⑩ 雑所得

また、⑪ 土地建物等の譲渡による譲渡所得、⑫ 株式等の譲渡所得を、上記10種類とは別に分離して課税(分離課税)しています。

(2) 所得金額の計算方法

不動産所得の金額や事業所得の金額は、総収入金額から必要経費を控除して計算します。

総収入金額 - 必要経費 = 所得金額

それ以外の各所得金額の計算方法については、次の表のようになっています。

所得の種類 所得金額の計算方法
①利子所得 収入金額
②配当所得 収入金額 -(株式などの元本を取得するために要した負債の利子)
③不動産所得 総収入金額 - 必要経費
④事業所得 総収入金額 - 必要経費
⑤給与所得 収入金額 - 給与所得控除
⑥退職所得 (収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2
⑦山林所得 総収入金額 -(植林費・取得費・管理費・育成費+伐採費・その他費用)- 特別控除額
⑧譲渡所得 総収入金額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額
⑨一時所得 {(総収入金額 - 収入を得るために支出した金額)- 50万円}×1/2
⑩雑所得 総収入金額 - 必要経費(公的年金等については公的年金等控除額)

③の不動産所得は家賃や地代、航空機などの貸付料で、必要経費の主なものは、支払利息や減価償却費です。固定資産等の耐用年数は国によって異なるので注意が必要です。日本で定められた耐用年数と償却方法によらなければなりません。
④の事業所得は、幅が広く、農業はもちろん、医者、弁護士、作家、レストラン経営などあらゆるビジネスから生じる所得のことです。
⑤の給与所得は、サラリーマンが受け取る給与・賞与の他、日本では次のような諸手当も給与のけさんに入れます。

  1. 住宅に係る手当
  2. 扶養家族手当
  3. 医療手当
  4. 日本勤務に対しての手当

さらには、実際に給与として受け取っていなくとも、次のような経済的利益も給与となります。

イ.社宅の無償又は低額による貸与
ロ.金銭の無利息を含め低い利率での貸与
ハ.本国の親会社の株式を利用したストックオプションなどの利益
ニ.不適格退職年金契約等に基づく会社拠出掛金

⑥の退職所得は、退職金や一時や一時恩給などの所得ですが、退職所得の金額は、退職金から「退職所得控除額」を控除した残額の2分の1ですから、他の所得に比べて非常に少ない所得税の負担になります。

退職所得控除額

(イ)勤続年数が20年以下の場合 ・・・ 40万円×勤続年数 ※80万円未満のときは80万円
(ロ)勤続年数が20年を超える場合 ・・・ 800万円+70万円 ×(勤続年数-20年)

退職金と称して支給されるものであっても、引き続き勤務している者に支払われるものは賞与とみなされ、退職金には該当しないので注意が必要です。
⑦の山林所得は、山林を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡することによる所得ですが、日本の非居住者や非永住者にはほとんど関係ありません。しかし、まれに外国に居住している日本人が親からの相続で山林を所有している場合があります。
⑧の譲渡所得は、資産の譲渡により生ずる所得です。但し、土地・建物の譲渡と株式の譲渡は、これと異なり⑪⑫の分離課税となります。
⑨の一時所得とは、1.営利を目的とする継続行為ではなく、2.労務や役務の提供でもなく、3.資産の譲渡でもなく、一時的な所得であるものです。
たとえば、懸賞金や生命保険金の満期一時金などがこれにあたります。一時的なので税負担は少なくてすみます。
⑩の雑所得は①~⑨までにあてはまらない所得で、謝礼や年金などです。

分離課税とされる譲渡所得

土地や建物の譲渡による譲渡所得や株式の譲渡による譲渡所得は、次に述べるように他の所得(①~⑩)と分離して課税することとされています。
⑪土地建物に係る譲渡所得
土地。建物の譲渡所得については、原則として長期譲渡所得は所得税15%地方税5%、短期譲渡所得は所得税30%、地方税9%です。
※短期・長期の区別は、その譲渡があった年の1月1日において所有期間が5年以下を短期、所有期間が5年超を長期としています。
⑫株式等の譲渡所得
株式等の譲渡益に対しては申告分離課税で20%(所得税15%、地方税5%)が課税されます

所得控除

所得金額 - 所得控除額 - 税額控除額 = 課税所得

確定申告の際には、それに該当すれば14種類の所得控除を受けることができます。しかし、非居住者が受けることができるものは限られています。

(1)居住者の場合

居住者(非永住者を含む)は確定申告において、それに該当すれば各種の所得控除の適用を受けることができます。

(2)非居住者の場合

非居住者の場合は、給与、賃貸収入、不動産の譲渡などの一般的に日本での源泉徴収による分離課税で所得税の納税が完了しますので、各種所得控除を受ける余地はありません。しかし、日本国内での事業所得がある場合には確定申告をなければならず、不動産からの収入や不動産の譲渡などの取得がある人も確定申告をしなければなりません。
また確定申告をすれば税金が日本で還付される場合もあります、非居住者が受けることができる所得控除は、雑損控除、寄付金控除、基礎控除の三つに限られることになります。

(3)一年のうちに居住者・非居住者両方に該当した場合

この場合は居住者期間と非居住者期間との所得を合算して確定申告することになります。この場合に居住者期間の所得から控除しきれない金額は非居住者期間の総合課税の適用を受ける所得から控除することになります。

居住者(永住者・非永住者)に認められる所得控除 非居住者
① 雑損控除
② 医療費控除 ×
③社会保険料控除 ×
④小規模企業共済等掛金控除 ×
⑤生命保険料控除 ×
⑥地震保険料控除 ×
⑦寄付金控除
⑧譲渡所得 ×
⑨寡婦(寡夫)控除 ×
⑩勤労学生控除 ×
⑪配偶者控除 ×
⑬扶養控除 ×
⑭基礎控除

非永住者の場合の注意点

② 医療費控除
医療費は病気やケガの治療目的で病院等に支払ったものですが、日本国内外を問いません。但し、確定申告で領収書を添付しなければなりません。
③ 社会保険料控除
国民年金保険料や厚生年金保険料などですが、控除の対象となる保険は、日本の法律に基づいて支払う保険料等に限定されているため、同種のものであっても外国の社会保険料は対象となりません。
⑤ 生命保険料控除
外国の生命保険会社と外国において契約した生命保険料は控除の対象にはなりません。
⑥ 地震保険料控除
外国の保険会社と外国において契約した地震保険料は控除の対象とはなりません。
⑦ 寄付金控除
国、地方公共団体、特定非営利活動法人(NPO法人)、独立行政法人など特定の団体に支出した寄付金や特定の政治献金に支出した金銭については、寄付金控除の適用を受けることができます。寄付金控除は次の算式により計算します。但し、日本の法律によって認められた団体等に限られますから、外国において寄付金控除の対象となるものでも日本では対象となりません。

寄付金等の支出額と総所得金額等の
合計額の40%とのいずれか少ない方の金額 - 2000円 = 寄付金控除額

⑧ 障害者控除
イ.障害者     27万円
ロ.特別障害者   40万円
ハ.同居特別障害者 75万円
⑨ 寡婦(寡夫)控除
27万円(特別の寡婦の場合には35万円)
⑩ 勤労学生控除
納税者が学生である場合には27万円
⑪ 配偶者控除
38万円
老人(70歳以上)の場合には48万円
⑫ 配偶者特別控除
配偶者に所得がある場合で最高38万円
⑬ 扶養控除
一般の控除対象扶養親族    38万円
特定扶養親族         63万円
老人扶養親族(同居老親等)  58万円
      (同居老親等以外)48万円
⑭基礎控除
38万円